酔雲庵


国定忠次外伝・嗚呼美女六斬(ああびじょむざん)

井野酔雲

創作ノート







大久保治男著「江戸の犯罪と刑罰」より




  • 牢屋敷は江戸では小伝馬町と本所にあり前者は町奉行、後者は関東郡代に属した。
  • 牢屋敷の『揚屋敷』は御目見以上、『揚屋』は御目見以下の直参、陪臣、僧侶、医師等、『百姓牢』は百姓、町人を収容した。
  • 本公事(預金、家督、地所、山境、質地、奉行人球菌の民事的争いの他に、密通、強淫、打擲等一部刑事事件も含む)と金公事(借金銀関係の争い)の訴訟を扱うものが『出入筋(民事裁判)』
  • 勘定奉行は関八州の御領および私領の訴を受ける。
  • 笞(むち)打ち、石抱かせ、海老責めの三種類の拷問を『牢問』といい、必要に応じて行ってよかった。
  • 笞打ち‥‥‥両手を後ろ手に縛り上げ、手首をぐっと上まで締めあげると両肩に肉が盛り上がるので、そこを棒で力一杯打ちすえる。痛みは強いが骨へは当たらないので、そうした。
  • 石抱かせ‥‥‥洗濯板のようにギザギザになった板の上か薪を6、7本並べた上へ両膝をまくって後ろ手に縛り、柱にくくりつけて座らせ、さらに膝の上に重い石を載せるのである。折り曲げた臑は薪やギザギザの板が 食い込み、その痛さは想像に余りある。石抱かせに用いる石は伊豆石で長さ3尺幅1尺厚さ3寸重さ12,3貫。この石を2、3枚より5、6枚位積み重ねれば痛さに失心して石の上に顎をのせてしまう。
  • 海老責め‥‥‥あぐらをかかせ、両足首を一つに結び、右足首より首へ縄を懸けて、前の方へ段々と締め寄せて行くと背中は海老のように丸くなり苦痛の姿勢となる。これを転がしたり吊り下げて棒で敲く事用いるある。
  • 木馬責め‥‥‥木馬の背の所をかなり鋭く尖らせておく台を作り、その上に下半身を裸にして跨がらせる。両手は後ろ手に縛り縄で天井より吊るし、転がり落ちないようにする。
  • つぶし責め‥‥‥指の爪を石で一本づつ砕いて行くのや足の骨を万力のような物で挟んで骨を砕く拷問。
  • 駿河責め‥‥‥被疑者の身体を縄で縛り肩と足を吊って弓なりにそらせて、その背中に重い石を載せ、ぐるぐる回したりした。
  • 瓢箪(ひょうたん)責め‥‥‥被疑者の腹部の一番柔らかい部分に縄をぐるぐると回し、これの両方より綱引きのように縄を引っ張り胴体を次第に絞め上げて行く。皮膚はめくれ、内蔵は圧迫されて破裂や腸捻転や内出血を起こし死亡する事もあった。
  • 蛇責め‥‥‥蛇をたくさん入れた桶の中に被疑者を入れ、棒でたたいたりして蛇を怒らせ被疑者に巻き付かせたり、噛んだりさせる。キリシタンの若い女などにした拷問で苦し紛れに蛇は女の陰部へもぐり込むのもいた。
  • 蚊責め、蟻責め‥‥‥全裸の全身に酒や糖を塗って縛って放って置くと、全身、蚊や蟻に刺されて大変な苦痛となる。
  • 刻み責め‥‥‥ペンチのような物で囚人の肉を少しづつ引き千切る。
  • 鼻そぎ、耳そぎ、指切りなどもあった。
  • うつつ責め‥‥‥被疑者を柱を背に立たせ続け、うつらうつらするとゆり起こして眠らせない。
  • くすぐり責め‥‥‥吉原遊郭などで、客を取らなかったりすると全裸にして脇の下や足の裏などをくすぐって苦しめた。
  • 蓑(みの)踊り‥‥‥キリシタンや年貢を納めない農民に蓑を着せ両手を縛って火を点ける。火だるまになった者は苦しいので走ったり、転げ回る。
  • 穴埋め‥‥‥穴を掘って逆さに吊るし、数日間、ぶら下げたままにする。顔面は血の逆流で膨れ上がり激しい苦痛で悶死する。
  • 潮責め‥‥‥海岸で杭に逆さ吊りに縛られて立たせる。波の度に、また、満潮になると潮水を飲んで死ぬ。
  • 水責め‥‥‥厳寒の頃、全裸にして川や池に何度も漬けて凍死させる。
  • 斬首刑を『下手人』といい、処刑される犯罪人は殺人を犯した者、殺人教唆、大勢で人を殴り殺した者、心中仕損じの片割れ、酒乱または乱心で人を殺した者、殺人の手引きを行った者など。
  • 『死罪』は斬首の後に試し斬りされ、田畑、家屋敷、家財の没収刑が付加される。十両以上盗んだ者、巧事、ねだり事をした者は死罪、前科二犯の者は三度目には金額にかかわらず死罪、その他、強訴、散逃の首謀者、偽造証文で金を借りた者、盗っ人の手引きをした者、主人の妻へ密通の手引きをした者、主人や親へ打ちかかったり斬りかかったりした者などが死罪となった。
  • 『獄門』は死罪と同じく斬首にし、その後、その首を二夜3日間、獄門台にかけて晒す。
  • 『引き廻しの上、獄門』に処せられる犯罪人は殺人強盗、金銭を付けて貰った捨て子をさらに捨てた者、主人の親類縁者を殺した者、地主を殺した者、偽秤や偽升を使った者、公文書偽造、主人の妻と密通、身体不自由な者を殺して所持品を盗んだ者、支配を受けている名主を殺した者、毒薬売りなど。
  • 『磔(はりつけ)』は主殺し、親殺し、関所破り、偽金銀を作った者、密通して夫を殺した女など、封建制度そのものの維持に重大な反逆を犯した極悪人に対してなされる死刑。
  • 『火罪』は放火犯に限る火あぶりの処刑。
  • 『遠島』は島流し、流刑である。死刑に次ぐ重罪で終身刑。大赦以外は帰還できなかった。江戸からは大島、八丈島、三宅島、新島、御蔵島などであり、博奕の常習犯、女犯の僧、廻船荷物の横領者、殺人の幇助者、沈没して死者を出した水夫などが島流しとなった。
  • 『重追放』は遠島に次ぐ重刑。死刑、遠島と同じく田畑、家屋敷、家財の没収刑も併科された。追放者は関八州、五畿内、肥前、甲斐、駿河、東海道筋、木曽路筋など『御構場所』での居住が禁止された。女が得心しないのに不義をした者、謀書と知りながら頼まれるに任せて遣わした者、地頭へ強訴した者、徒党を組んで逃散した者などに重追放が科された。
  • 『中追放』は御構場所の範囲も少なくなり、没収も田畑、家屋敷だけで家財は残される。中追放者は武蔵、山城、摂津、和泉、肥前、下野、甲斐、駿河、東海道筋、木曽路筋、日光道中での居住が禁止される。口留番所を女を連れて忍び寄った者、鉄砲を隠し持っていた者、土地を隠し持っていた者、夫のある女へ密通の手引きをした者、御褒美を貰おうとして偽の訴人をした者などが中追放となった。
  • 『軽追放』は江戸の日本橋から十里四方、京、大坂、東海道筋、日光道中での居住が禁止される。さらに犯罪を行った国、住んでいる国からも追放された。ワイロを差し出した者、縁談が決まっている娘と密会した男、没収になるべき田畑地面を隠しておいた者などが軽追放。





創作ノートの目次に戻る