酔雲庵


酔中花

井野酔雲






間章 会話




 「きっとよ、あしたになれば、きっとうまく行くわ」

 「スキャンダルだな。あいつを失脚させてやる」

 「奴は笑いすぎたよ。調子に乗りすぎたんだな。バチが当たったのさ」

 「とうとう革命か。しかし、あまりにも夜明けが遅すぎたぜ。みんな、昔のような気力なんて抜けちまったよ。結構、長い夜を楽しんでるぜ」

 「あたしね、そういうの嫌いよ」

 「今に見てろよ。わしを追放したって解決するわけじゃねえ。あんな老人ホームはひっくり返してやる」

 「これはあたしのよ。やめてよ。さわらないでちょうだい」

 「ちょっと難しいな。今の医学では姓転換はできますけど、まだ、死んだ人を生き返らせる事はできないんですよ。でも、奥さんの頼みですからね、まあ、何とかやってみましょう」

 「もう、あんな人、信じません。うまい事ばかり言って、あたしをだましてきたわ。見てよ、こんなに太っちゃって。もう絶対、信じないわ」

 「馬鹿な人間どもだ。奴らは法律は正しいと信じてやがる。楽しくなるね。ああゆう奴らがいるお陰で、こっちはガッポガッポ儲かる」

 「両手と両足をもいじゃうのよ。そしてね、出血多量で死なないように綺麗に蓋をしてあげるの。そしてね、首輪をつけて、色んな所に散歩に連れてってやるの」

 「見ろよ。真っ赤に燃えてる。いいぞ。そうだ、みんな燃えちまえ、ヒッヒッヒ」

 「どうして? どうしてなの? どうして、あたしばっか、みんなでいじめるの? あたしって、そんなに可愛いのかしら」

 「畜生! 馬鹿にしやがって、ただじゃおかないから」

 「拙者はあの女を殺してやる。この槍で串刺しにしてやる。あのにやけた野郎も一緒にだ」

 「アブサンとジンとウィスキーを混ぜてくれ。そして、ペパーミントをちょっぴりな」

 「もっと強くよ。骨が折れるくらいに強く抱いて。そして、愛してると言って」

 「随分、長かった。でも、あたしはついにやったわ。あの会社はもう、あたしのもんだわ」

 「うるせえなあ、誰もおめえの歌なんか聞いちゃあいねえよ」

 「あたいさ、あんたの事、惚れちゃったみたい。どうしてなんだろ」

 「太平洋のど真ん中で昼寝がしてえ」

 「寒さをしのげる古着と生きて行けるだけの食べ物があればいい」

 「赤ちゃんに戻りたいわ」

 「わたしはすべてを許さなくてはならない」

 「人間はいつだって独りなんだ」

 「このすけべが、どこ、さわってんのよ」

 「まだ駄目だ。何かが足りない」

 「ねえ、お嬢さん、俺の子供、産んでくれよ」

 「まだ血がついてるわ。あの人の血。あったかい真っ赤な血。いいえ、あたしじゃないわ。あれはきっと夢よ。あの人はきっと、いつものように笑ってくれるわ」

 「おい、俺にもあいつと同じ奴をくれ。頭を使うと腹が減るな。金儲けだ? くそくらえ! どいつもこいつも何かをたくらんでいやがる」

 「僕、ちょっと、しょんべんして来ます」

 「ちょっと、あんた、勿体ない事しないでちょうだい」

 「今、アフリカでは人々が死んでいます。飢えに苦しんで子供たちが泣いています。皆さん、こんな事でいいのでしょうか? 是非、皆さんの目で、この悲惨な事実を確かめて下さい。ボーナスが出たら、みんなでアフリカツアーに出掛けましょう」

 「からっぽっていう事は何でも入れる事ができるんだわ」

 「もうやけくそよ。おかわり、じゃんじゃん持って来て。今夜はあたし、倒れるまで飲んでやる」

 「来るべき時は来た。市民よ、袋を持ってゴミを拾え! この地上から一切のゴミを消し去るんだ!」

 「いいえ、いけません。教科書にはそんな事は書いてありません」

 「へっへっへ。いいケツしてるな。可愛がってやるぜ。へっへっへ」

 「こんなもんが飲めるか! もう一度、やり直せ。パリの朝だぜ。スラムの朝じゃねえんだよ」

 「もう、あたし、あなたから離れる事、できないわ。もう、何もかもあなたのものよ。さあ、持っていって」

 「わしじゃてのう、そりゃあ、五十年も前はいい女じゃて。花の銀座でよ、パラソルなんかさして腰を振り振り歩ったもんよ」

 「綺麗なねえちゃんに囲まれてよ、上等なシャンパンを飲むのさ」

 「そうよ、それに決まってるわ」

 「あたしはお金が大好き。お金のためなら何だってする。誰が何を言おうとあたしはあたしさ。この世はお金を持ってる奴が強いんだもん」

 「あたちね、大きくなったら、おにいちゃんのお嫁さんになるの」

 「彼は人の命なんて何とも思いませんでした。人を殺す事の楽しみを体で覚えてしまったのです。あの楽しみを覚えてしまったら、もう忘れる事はできません。もう、中毒と同じです。人間の悲鳴、苦しみに歪む顔、そして、命が消える瞬間の何とも言えない快感。あれほど素敵なものはありません」

 「それは愛なのです。今、人類に最も必要なのは愛なのです」

 「あ〜あ、つまんねえ」




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