酔雲庵


酔中花

井野酔雲





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 庭で子供たちが遊び回っている。

 砂場では二歳位の小さな子供たちが数人、遊んでいる。

 ベンチに腰掛けて、子供を見ているラーラと久美子。

「あんた、いくつなの?」と久美子はラーラに聞いた。

「十八よ」

「へえ、十八でもう子供がいるとはね。驚いたわ」

「仕方がないじゃない。天からの授かり物だもん」

「それで、お父さんは?」

「わからない」

「わからないって?」

「誰だかわからないのよ。別に誰でもいいのよ。まだ、男と一緒に暮らしたいとは思わないし‥‥‥」

「いい加減ね‥‥‥」

「あたし、困ってんのよね。あの子がいなければ、あたし、もう、さっさと人間の国に行っちゃうんだけど‥‥‥」

「でも、子供の事は大丈夫なんでしょ。ここで面倒を見てくれるし」

「そりゃ大丈夫だけど、もう二度と会えなくなっちゃうじゃない」

「そうか‥‥‥難しいわね」

「毎日さ、今日こそは子供に別れを告げて、この国から出ようと思って来るんだけど、あの子に会うと出られなくなっちゃうのよ。かと言って、さよならも言わないで黙って出て行けないし‥‥‥」

「いっそ、子供も一緒に連れてったら?」

「そんな事できないよ。あの子の人生はあの子のものだよ。あたしが勝手にそんな事できない」

「そうね‥‥‥」

 二歳の子供がよちよちとラーラの所に来た。

「お母ちゃん、ちょっと来て」と子供はラーラの手を引っ張って砂場の方に行く。

「見て」と子供はラーラを見上げて言った。

「なあに、これ?」とラーラはしゃがみこんで、子供が作ったものを見ている。そして、二人は遊ぶ。

 久美子はラーラと子供を見ている。




夕焼け




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 夕焼け。

 たんぼの中の道を久美子とラーラが歩いている。

「あ〜あ、いやんなっちゃうな」

「可愛い子供じゃない」

「可愛いから余計よ。あ〜あ」

 道端の木陰で男と女が抱き合っている。

 久美子は見ない振りをする。

 ラーラは楽しそうに見る。

「何だ、三公じゃない」とラーラは言った。

 三公と呼ばれた男は女を抱きながら顔を上げた。

「よう、ラーラか。また、子供に会って来たのか?」

「うん‥‥‥どこの娘?」

「いい玉だろ。隣村の女だよ。見ろよ、このでっけえおっぱい。おめえの倍はあるぜ」

「そんなのでっかけりゃいいってもんじゃないやい」

「誰だい?」と三公は久美子の方を見る。

「誰でもいいだろ」

「紹介しろよ」

「やだよ。この人は特別なんだ。お前の腐れチンコ入れられたらたまんないよ」

「何を言ってやがる。おめえのマンコこそ腐ってるんじゃねえのか。子供ができてから、男が怖くなったってえじゃねえか。最近はレズってばかりいるんだろう」

「うるさい、馬鹿!」

 ラーラ、プイと三公に背中を向けて歩きだす。

 久美子はラーラの後を追った。

 三公はまた女に熱中し始める。




酔中画1-742




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 ラーラの家。

 ラーラが裸でポーズを取っている。

 久美子、ラーラのヌードを描いている。

「どう、あたし、子供、産んだ体に見える?」

「全然、見えないわ」

「そう、それじゃあ大丈夫ね。あたし、この体で食べて行けるわね?」

「食べて行けるけど、他にないの? 何も体を売る事もないでしょ」

「だって、人間の国には子供が生まれないようにするお薬があるんでしょ」

「あるわ。でも、体によくないわ」

「子供さえできなけりゃ、もう、男なんて怖くないわ」

「できたわ、ほら」と久美子はラーラに絵を見せる。

「これ、ほんとにあたし?‥‥‥綺麗‥‥‥」

「そうよ。とても綺麗よ。勿体ないわよ。その体をくだらない男に売るなんて。どうせ売るんなら凄く高く売りなさい。それも、ただの男じゃなくて、その男の子供を産んでみたいと思うような男にね」

「うん、そうするわ。ありがとう」とラーラは久美子に抱き着いた。

 ラーラ、久美子の目を見つめる。

「あたし、お姉さん、大好き」

 ラーラ、久美子にキスする。

 ラーラ、久美子の服を脱がそうとする。

「ちょっと待ってよ。あたし、女の子と寝るの、初めてなのよ‥‥‥恥ずかしいから、電気、消して」

「いいわ」とラーラは電気を消した。

 服を脱ぐ音。

 二人がもつれ合う音。





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